【飲食店経営の基本】QSCとは?具体的な取り組み方まで紹介
更新日:2024年5月20日(月)
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飲食店や小売店の基本といわれるQSCとは、Quality(クオリティ=品質)、Service(サービス)、Cleanliness(クレンリネス=清潔さ)の頭文字を取ったものです。
近年ではQSCにValue(価値)やHospitality(おもてなしの心)などを付けたものも登場し、さまざまに活用されています。
この記事では、QSCの詳しい意味と具体的な取り組み方、マクドナルドやファミリーマートなどの企業の取り組み事例を紹介します。QSC向上のために活用できる便利なツールも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
QSCとは
QSCとはQuality(提供するメニューの品質)、Service(接客の品質)、Cleanliness(お店の清潔さ)の頭文字を取ったものです。
マクドナルドの実質的創業者であるレイ・クロック氏が、マクドナルドの店舗経営のために導入しました。
マクドナルドの成功により多くの飲食業・サービス業で導入されるようになり、「飲食店・小売店経営の基本」といわれています。
QSCそれぞれの意味するところを以下で詳しく見ていきましょう。
Quality(クオリティ)
飲食店にとって、メインの商品である料理や飲み物などの品質は、最も重視されなくてはなりません。
ただし、ここでいう「品質」は、料理・飲み物の味だけでなく、ボリュームや温度、盛り付けなどの見た目、提供のスピードなど、料理・飲み物に関するすべての要素を含んでいます。
また、品質には価格設定も関わってきます。「品質のわりに価格が高い」と感じれば、顧客の満足度は低下します。価格はあくまでも、顧客が感じる品質に合わせて設定しなくてはなりません。
品質の向上に努めるとともに、品質が低下しないよう、定期的なチェックが必要です。チェーン展開する場合には、すべてのチェーン店で同じ品質が維持される必要があるでしょう。
Service(サービス)
飲食店が成功するには、料理の品質だけでなく、従業員の顧客に対する言葉や態度、コミュニケーションの取り方など、接客の品質も重要です。料理がどれほど美味しくても、従業員の態度が悪いとなれば顧客の満足度は低下します。
接客は、顧客の入店から退店までのあいだに、予約、入店案内、オーダー、料理の提供、お見送りの段階を経て進みます。各段階における接客の品質をそれぞれ向上させることが必要です。
Cleanliness(クレンリネス)
人が口に入れるものを扱う場所である飲食店にとって、お店の清潔さは厳しく求められます。店内の清掃を徹底し、清潔さを維持しなくてはなりません。
清掃は実際に食事をする客席部分だけでなく、トイレや受付、調理場など、客席からは直接見えない部分まで徹底することが大切です。1カ所でも清潔でない場所が見えてしまうと、「食器がきちんと洗えていないのでは?」などと、清潔さに対する疑念が顧客に芽生えてしまうからです。
また、お店の清潔さには従業員も含まれます。従業員の身だしなみや髪型、指先、あるいはユニフォームのシミや汚れ、着崩れなどがないよう、十分にチェックしましょう。
QSCが重要視される理由
飲食店においてQSCは集客のしやすさに結びつき、売り上げにも影響するため、重要視されています。
飲食店が売上や利益を上げるためには、顧客を呼び込む必要があります。さらに新規顧客だけではなく、リピーターがどれほどいるかも売上に直結します。リピーターを獲得できない場合は、常に新規顧客を集客しなければならないでしょう。顧客が飲食店のリピーターとなるかどうかは、初めて来店した時の印象や居心地の良さが影響します。その印象を大きく左右するものが、QSCの3つの要素です。
クオリティは、味という飲食店において最も重要な要素です。どれほどおしゃれな飲食店であっても、味が美味しくなければリピートされません。また、接客の質や店内の清潔さも印象や居心地の良さに影響します。
QSCのどれか1つでも欠けると顧客満足度は上がりにくく、経営が悪化しかねないため、飲食店においてQSCは重要視されています。
近年になって新たに登場しているQSC+「α」
より高い価値を提供し、顧客に選ばれるお店になるためには、QSCだけでは足りないという考え方も近年になって複数登場しています。
いずれも「QSC+α」の形を取っている、その代表的な考え方を以下で見ていきましょう
QSC+V(Value=価値)
まずはQSCに「Value(=価値)」を加えたものです。マクドナルドが提唱し、企業理念にもなっています。飲食店は顧客に対して単に料理や飲物ではなく、「価値」を提供するものであり、その価値の提供は、QSCが高いレベルで徹底されてはじめて可能になる、という考え方です。
マクドナルドではその価値を、「最高の店舗体験を提供し、顧客や従業員、地域住民が笑顔になること」と定義しています。
QSC+Vの考え方を取り入れようと思うなら、顧客に対してどのような価値を提供したいかをよく考えることが重要です。
QSC+H(Hospitality=おもてなしの心)
次に、QSCに「Hospitality(ホスピタリティ)」を加えたものがあります。ホスピタリティは日本語なら「おもてなしの心」に当たるでしょう。
ホスピタリティは、従業員が単に決められた通りの接客を行うだけでなく、顧客に喜ばれることを常に意識し、積極的に行動することを意味しています。顧客がメニューを開く前に、アレルギーの有無を確認する、あるいは量を変更できることを説明する、などが例として挙げられます。
あるいは、顧客がリピーターであればその注文歴を把握しておき、いつもパスタを注文する顧客なら新作のパスタを提案する、なども一例です。ホスピタリティの高いサービスが提供できれば、顧客のリピート率向上やSNSでの口コミ投稿などにつながるでしょう。
QSC+A(Atmosphere=雰囲気)
QSCに「Atmosphere(雰囲気)」を加えたものもあります。飲食店を選ぶ際、お店の雰囲気を重視する顧客は多くいます。雰囲気が気に入った顧客はリピーターになることもあるでしょう。
このQSC+Aを実践するにあたって注意が必要なのは、「雰囲気」の好みは人によって千差万別だということです。「万人が好む雰囲気を作るのは難しい」ことを頭に置き、むしろコンセプトを明確にすることを心がけましょう。
あるコンセプトを定めたら、店構えから内装、調度品、従業員の服装やふるまい方などの細部に至るまで、そのコンセプトで統一します。そうすれば、そのコンセプト・雰囲気に惹かれた顧客が集まってくれることになるでしょう。
QSCの向上に必要な4つのステップ
QSCをどのようにしたら向上させられるかを解説します。
具体的な方法として、「顧客アンケートの実施・分析」「改善案の策定・共有」「改善案の実施とレビュー」「従業員満足度を向上させる」の4つが挙げられます。
顧客アンケートの実施・分析
QSC向上のため有効な方法としてまず挙げられるのは、顧客アンケートの実施です。自店舗のQSCが顧客からどのように思われているかを知るためには、直接聞いてみるのが一番だからです。
顧客アンケート実施の流れは以下になります。まずアンケート用紙を作成し、店内に設置します。
アンケートは、たとえば以下のような内容となるでしょう。
当店のことを知ったきっかけ
看板を見て、お店の前を通りかかって、チラシを見て、家族・友人などからの紹介、ホームページを見て、食べログを見て、ぐるなびを見て、などの選択式
当店を選んでいただけた理由
自由記入
QSCに関する質問
料理のおいしさは?
料理の提供時間は?
スタッフの接客態度は?
お店の活気・雰囲気は?
お店の清潔感は?
総合的な満足度は?
などの質問に1点~5点などの点数で答えてもらう
顧客の負担にならないよう、アンケートの項目が多くなりすぎないよう注意しましょう。アンケート用紙を置く場所は、テーブル上など顧客から見えやすい場所がおすすめです。
改善案の策定・共有
受け取ったアンケートは、日々従業員と共有するとともに、1週間や1カ月単位などで集計し、まとめておきましょう。そのうえで、アンケート結果について従業員と話し合います。
話し合いでは、改善すべき点と好評だった点の両方を洗い出します。
改善すべき点については、具体的な改善案を考えましょう。好評だった点については、それをより伸ばすための方法を考えると、顧客満足度の向上につながります。これらのアンケート結果や改善案は、従業員間で必ず共有しておきましょう。
改善案の実施とレビュー
改善策が決まったら実行に移し、結果をレビューします。このとき改善する業務については、行うべき作業内容や手順が従来と変わるケースが多いでしょう。
そのため作業手順が変わることを従業員に周知徹底することが大事です。またチェーン店などであれば、他の店舗で挙がった改善点も取り入れ、サービスの質を統一させておく必要があります。連絡ツールなどを活用し、漏れなく内容を伝えましょう。
新しい手順が定着するまでは、毎日朝礼で確認したり、定期的にチェックしたりする方法もあります。連絡ツールなどで周知するほか、その場限りで終わらせないためにも、改善策は必ずマニュアルに反映させておきましょう。
また、実施後にはQSCが改善されているかどうかを確認します。レビューをする際には、本記事内で説明する「QSC チェックシート」を用いると良いでしょう。
従業員満足度の向上も並行して努める
QSCを高めるためには、従業員満足度を向上させることも効果があります。QSC向上には従業員の協力が欠かせません。従業員がモチベーションを高く保って仕事をすれば、QSCは自然に向上していくといえるでしょう。
従業員満足度を高めるためには、社会保険や休暇制度など福利厚生の充実や、勤務時間が適切に調整され無理が出ないようにすることなどが大切です。
また、良い仕事をした従業員が店長や同僚から褒められる状況を意識的に作ると、従業員のモチベーションは大きく高まるでしょう。
QSC向上にチェックシートを活用しよう
QSCそれぞれについてチェックシートを作成・運用するのも、QSC向上に有効です。
QSCはどの店舗で誰がやっても、同じレベルになる必要があります。QSC向上のポイントを明記したチェックシートの作成と運用で、QSCレベルをバラツキなく維持することが可能となります。
また、チェックシートは作成して終わりではなく、従業員全員で共有し、定期的にQSCチェックを行うことが大切です。チェックシートの項目例をご紹介します。
Qualityに関するチェック項目の例
- 食材の鮮度は決められた基準をクリアしているか
- 調理手順はすべてマニュアルに記載され、それが確実に実行されているか
- 食材の廃棄量は決められた基準内に収まっているか
- 調理された料理がテーブルに運ばれるまでに遅れが発生していないか
- 料理の見た目は決められた基準の通りになっているか
Serviceに関するチェック項目の例
- 顧客に対する挨拶は励行されているか
- 笑顔で接客できているか
- 顧客が来店してから席に案内されるまでのルーティンが守られているか
- 顧客と過不足のないコミュニケーションを取り、必要な情報提供ができているか
- 混雑時の対応に問題が生じていないか
- クレーム時の対応オペレーションは守られているか
Cleanlinessに関するチェック項目の例
- 駐車場はきれいな状態を保てているか
- トイレは定時に点検されているか
- 客席の清掃状態に問題はないか
- テーブルや椅子は定期的に点検され、必要に応じて修理されているか
- テーブル上の調味料などは清潔に保たれているか
- 冷蔵庫に保存されている商品にカバーがかけられているか
- カウンターや棚などは整理整頓、清掃されているか
- 調理場の換気口やフードは毎日清掃されているか
- 感染症対策は決められた通りに実施されているか
QSC実践の具体例
QSC実践の具体例として、マクドナルドとファミリーマートを紹介します。
マクドナルド
前述の通りQSCはマクドナルドの創業者レイ・クロックにより、世界で初めて提唱されました。1955年にマクドナルド第1号店がオープンした際、QSCを具体的に実践するための15ページにわたるオペレーションマニュアルが、関係者全員に配布されました。
そのようなマニュアルを作成するレストランチェーンは当時どこにもなかったため、関係者は唖然としたそうです。
マクドナルドの品質管理はその後も徹底され、生産地から店舗までの安心・品質・衛生のための食品管理システムが構築されています。
その基準は
マクドナルドのグローバル基準:製品、原材料、オペレーション、設備などを仕様書・マニュアルに記載
日本国内の関連法規:食品衛生法、日本農林規格(JAS)、公正競争規約、健康増進法など
日本マクドナルドのローカル基準:科学的な知見や社会環境などから決められた自主基準から構成
上記の基準に合わない商品やサービス、店舗、オペレーションは世に出ることを許されません。
ファミリーマート
ファミリーマートではQSCをあえて「S&QC」と読み替え、サービスを前面に出した取り組みを行っています。また、QSCはあくまでも基本であり、そこに「ホスピタリティ(おもてなしの気持ち)」付加することを全社員・加盟店に徹底しています。
独自の従業員育成システム「スタッフトレーナー養成講習会」「ストアスタッフ資格制度」などにもQSCが組み込まれ、QSCレベルの向上が図られます。ストアスタッフ資格制度で最優秀の「エクセレントスタッフ」を受賞した従業員を、「QSCトレーナー」として直営店に配属する制度も2017年に導入されました。
QSCの向上には「はたLuck」がおすすめ
QSCを向上させるためには「はたLuck」の導入がおすすめです。QSC向上に活用できる「はたLuck」の便利な機能を以下でご紹介します。
店舗の改善点を共有できる「連絡ノート」機能
前述の顧客アンケートやその集計結果で店舗の改善案を共有するには「連絡ノート」機能が便利です。
「連絡ノート」は紙のノートをデジタル化したもので、店舗内の情報共有を簡単に行なえます。従業員のコメントも入れられるため、具体的な改善方法についてのディスカッションも可能です。
さらに「連絡ノート」機能はリアルタイムで送受信できるため、アンケート結果の共有に限らず、普段の申し送りでも重宝します。イレギュラーな出来事や重要な連絡事項などを、抜け漏れなく伝えるために便利なツールです。
紙の連絡帳とは異なり、店舗へ出勤しなくても伝言内容を確認できるため、スムーズな対応が可能となります。結果的にサービスの質が上がり、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
QSCチェックシートを手軽に確認できる「マニュアル」機能
前述のQSCチェックシートの運用には「マニュアル」機能の活用が適しています。
QSCチェックシートは従業員がそれを見ながら、定期チェックを行えるようにしておかなくてはなりません。「マニュアル」機能を活用すれば、QSCチェックシートをスマートフォンなどから、必要なタイミングで確認できます。
また、複数店舗を展開している飲食店の場合、「はたLuck」なら全店でマニュアルを共有できる点も便利です。他の店舗で発生したトラブルやクレームの改善策をすぐにマニュアルへ反映でき、サービスの質を全店舗で統一できます。
さらに 動画や画像でマニュアルを共有できるため、 調理手順なども伝えやすくなっています。全国展開をしている大規模チェーン店でも味の均一化を図ることができるため、QSCの向上にも役立ちます。
従業員に感謝の気持ちを伝える「星を贈る」機能
前述の従業員満足度を向上させるためには「星を贈る」機能が使えます。
「はたLuck」には「感謝」「応援」「期待」「頑張った」などの想いを伝える「星」を送る機能があります。QSC向上に貢献した従業員に「星」を送れば、従業員のモチベーションが高まるでしょう。
また、送られた「星」に対して、他の従業員から共感を示す「拍手」が送られれば、従業員は自信や自己肯定感を得ることができます。従業員のモチベーションややる気は、そのまま仕事の質にも反映される傾向があるため、星を送り合って良い雰囲気の職場にすることで、結果的にQSCの向上にもつながるでしょう。
飲食店における「はたLuck」の活用事例
株式会社大戸屋
『店舗改革の鍵となる「情報共有」と「教育サイクル向上」に貢献』
定食屋「大戸屋ごはん処」を展開する株式会社大戸屋。注文を受けてから一品一品丁寧にこしらえる「にっぽんの食卓ごはん」は、今や国内のみならず海外でもファンが増加しています。その味とサービスを一定のクオリティで実現し、さらに向上させていくためには、調理マニュアルをはじめ様々な情報をスムーズかつ正確に現場へ共有することが不可欠。
店舗改革の一環として導入された「はたLuck」の活用事例について、本部・SV(スーパーバイザー)・店長の各視点から詳しくお話を伺いました。
QSC向上のためにさまざまなツールを活用しよう
Quality(メニューの品質)、Service(接客の品質)、Cleanliness(清潔さ)の頭文字を取ったQSCは、飲食店・小売店には欠かせない基本です。
近年ではValue(価値)やHospitality(おもてなしの心)、Atmosphere(雰囲気)などとも組み合わされながら、活用されるケースも少なくありません。
QSC向上のためには、顧客アンケートによる改善点の共有、QSCチェックシートの作成・運用、従業員満足度の向上などが有効です。
これら施策の実行に便利な「はたLuck」を活用し、QSCを向上させて繁盛店を作りましょう。
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